2人の日本のマーケッターが、マーケティングの力で業績を大幅に上げています。
一人はUSJの執行役員、森岡 毅さん。もう一人は、ネスレ日本の社長、高岡浩三さんです。
この二人は、経歴が非常に似ています。
二人とも神戸大学の経営学部出身で、卒業後外資系企業に進みました。
高岡さんは、P&GからUSJへ、高岡さんは、ネスレ日本に。
高岡さんは著書「USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門」角川書店の中でこう語っています。
「USJは、「マーケティング」を重視する企業になって、劇的に変わったのです。 かつては新規事業の成功率は30%程度でした。それが今や、97%! 「全弾命中」といっても過言ではありません。」と語っています。
実際、2015年10月には過去最高の月間175万人を集客し、USJの3倍の商圏人口に陣取る東京ディズニーランドをも超えて、単月ではありますがついに集客数日本一のテーマパークもなっています。
目次
マーケターに最も大切なスキル”戦略的思考”
では、マーケティングとは具体的にどうするかというと、マーケターとしてのスキルをつけることになります。
POINTマーケターとはマーケティング理論や調査に専門的な知識を持つマーケティング戦略立案者のことをいう。
マーケターになるために最も大切なスキルは、戦略的思考能力を身につけることです。
戦略とは、何か達成したい目的を叶えるために、自分の持っている様々な資源を、何に集中するのかを選ぶこと。
戦略が必要な理由は2つあるのです。
- 達成すべき目的があるから。
- 資源は常に不足しているから。
以下の二つを明確に意識するために戦略的思考が必要になります。
経営資源(リソース)とは?
では「経営資源」とは具体的に何なのか理解してみましょう。経営資源には主に6つのものがあります。
「カネ、ヒト、モノ、情報、時間、知的財産」を6大経営資源と呼びます。
「戦略」と「戦術」の違い
最初にお話した「戦略(Strategy)」は目的を達成するための資源配分の選択でした。
「戦術(Tactic あるいはExecution)」は戦略を実行するためのより具体的なプランのことを指します。
戦術は常に戦略の下位概念です。戦略的思考は必ず、「目的→戦略→戦術」と下方展開していきます。
つまり戦略の方が戦術よりも大事なのです。
戦略の大きなミスは戦術ではリカバリーできないからです。
ビジネスの基本を構成する”フレームワーク”
ビジネスの基本は、以下の4つを明確にすることです。
- 目的:OBJECTIVE(達成すべき目的は何か?)
- 目標:WHO(誰に売るのか?)
- 戦略:WHAT(何を売るのか?)
- 戦術:HOW(どうやって売るのか?)」
この4つに、マーケティング・フレームワークである、以下の2つを組み合わせます。
開発・運用・意思決定を行う際に、その基礎となる規則・構造・アイデア・思想などの集合のこと。日本語では「枠組み」などと訳されることが多い。出店:Wikipedia:フレームワーク
フレームワーク「5C」
自社の現状を明らかにして、次の戦略を考案する為のフレームワーク。
- Company(自社の理解)
- Consumer(消費者の理解)
- Customer(流通など中間顧客の理解)
- Competitor(競合する他社の理解)
- Community(ビジネスをとりまく地域社会の理解)
フレームワーク「4P」
4つの視点からターゲット市場を分析。自社の課題と強みを明確にし、具体案を考案する為のフレームワーク
- 製品をどうやってつくるか(Product)
- 価格をどう設定するのか(Price)
- 流通をどう設定していくのか(Place)
- どうやって顧客に販売促進をするのか(Promotion)
マーケティングで最も重要で困難な「顧客の問題を発見する力」
一方、ニュースキュレーションサービスのNEWAPICKSで「イノベーターズ・ライフ」を連載した、ネスレ日本の高岡浩三社長は、以下のようにおっしゃっていました。
「あらゆる部門でマーケティングが必要になってきます。一番重要で困難なのは、顧客の問題を発見することです。顧客の問題さえ発見できれば、解決策を考えることはそれほど難しくありません。顧客の問題の中には、顧客が気づいているものと、気づいていないものがあります。」
出典:ニュースピックス
マーケティングの神様コトラー氏はこう語っています。
マーケティング=顧客の問題解決」と定義づけることについて意見が一致しています。日本の企業にはマーケティングがまだしっかり根づいていませんが、マーケティングを「顧客の問題解決」ととらえれば、組織内でも営業から総務や人事まであらゆる部署でマーケティングの観点が重要です。
高岡さん自身マーケティングを武器にして、「キットカット受験生応援キャンペーン」や「ネスカフェ アンバサダー」などのヒット企画を次々に生み出してきました。
具体的にどうするかというと、以下の考えが必要になると言うのです。
顧客が気づいていない問題を発見することが重要であり、これは調査をしても出てきません。もちろん、顧客自身が気づいていないからです。このような問題を発見し、解決策を導き出すことができれば、イノベーションにつながります。たとえば掃除機。ロボットが勝手に掃除をしてくれるなんて誰も思わなかった時に、自動でクルクル回る掃除機が登場しました。あれは、顧客が実現できると思っていない潜在的な課題を解決できています。では、イノベーションはどのように生まれるのか。残念ながら、それには方程式のような明確な解はありません。ひたすら考える、そしてアイデアの98パーセントはやってみる、それに尽きるようです。
つまり、顧客が抱えている問題を徹底した考え、さらに顧客さえ気づいていない問題にまで迫るのです。
迫るためには、実践するしかありません。
今回紹介したのはマーケターとしての”入り”であり、戦略的思考の根幹となる”基礎”です。
- 目的と経営資源の明確化
- 戦略と戦術の違いの認識
- フレームワークを使った自社戦略発案
- 顧客の問題解決
ぜひ、以上の4つを意識・実践して自社の経営拡大・安定に導いてください。
記事中紹介参考著書
「USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケ ティング」角川書店
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