目次
なぜ古典を読む必要があるのか?
古典は、コンサルタントや文章を書いている人だけではなく、経営者にも価値ある情報です。
モンテーニュは随筆で、人生で最良の3つのことは「友情」「セックス」そして「読書」だと言っています。中でも最も良いのは読書だといいます。友人は死んでしまい、セックスの相手は裏切るかもしれませんが、本はいつもそばにいてくれるからです。
西洋では、古典はリーダーに必須の教養で、古典文学や歴史を知らない人は、尊敬されませんし、相手にもされません。
世界とコミュニケーションを取っていく時代には、古典の素養は必須といえます。
古典の利点としては、大きく分けて、2つあります。
1 死者と心から対話する
まず、古典を読むということは、「死者と心から対話する」ことですので、人間力を養うことにつながります。
16世紀、有名なフランスの哲学者ミシェル・ド・モンテーニュは「読書は私にとって昔から有益なものである。(本に)教えを得ているというよりも、鍛えられているようだ」と記しました。
2 書き手が死んでもこの言葉は生き続ける
さらに、ソクラテスが「哲学は死に方の訓練である」といったように、古典もまた”死に方”について考察する材料になります。
モンテーニュは随筆で、人間の生きかたについて熟考を重ねていて、その中の1つに、哲学的な思索とは「いかに死ぬか」を学ぶためのものだ、と書かれています。
最後に、18世紀の英国で「文壇の大御所」と呼ばれたサミュエル・ジョンソン博士の素晴らしい言葉を紹介します。
「書くことの唯一の目的は、読者がより人生を楽しみ、より人生の苦しみに耐えられるようにすることである」
多くの人が情報発信する時代ですので、さらに大切な考え方だと思います。
「書き手が死んでもその言葉は生き続ける」からです。
世界一の起業家渋沢栄一と論語
古典とビジネスのつながりをもっとも端的に表した人物が、渋沢栄一です。
渋沢栄一(しぶさわ えいいち)は、1840年に埼玉県で生まれました。
起業家として、第一国立銀行(現みずほ銀行)や東京証券取引所などといった多種多様な企業の設立・経営に関わり、
日本資本主義の父といわれています。
最近話題の理化学研究所の創設者でもあります。
設立した主な会社は、第一国立銀行ほか、東京瓦斯、東京海上火災保険、王子製紙(現王子製紙・日本製紙)、田園都市(現東京急行電鉄)、秩父セメント(現太平洋セメント)、帝国ホテル、秩父鉄道、京阪電気鉄道、東京証券取引所、キリンビール、サッポロビール、東洋紡績、独立行政法人理化学研究所など、多種多様の企業の設立に関わり、その数は500以上といわれています。
渋沢が三井高福・岩崎弥太郎・安田善次郎・住友友純・古河市兵衛・大倉喜八郎などといった他の明治の財閥創始者と大きく異なる点は、「渋沢財閥」を作らなかったことです。
「私利を追わず公益を図る」との考えを、生涯に亘って貫き通し、後継者の敬三にもこれを固く戒めました。
その渋沢の経営の指針となったのが、「論語」でした。
渋沢はベストセラー「論語と算盤」をはじめ、多くの論語の解説書を書きました。
その中で「論語と算盤は甚だ遠くして甚だ近いもの」と書いています。
つまり、「正しいことをした人が、ビジネスでも最後には報われる」ということです。
車の両輪と同じで、片方が欠けていてはいけません。
理念(マインド)と仕組み(テクニック)の関係と近いですね。
日本の歴代の偉人たちもみな論語を読んでいます.
蘇我氏、聖徳太子、源頼朝、義経、徒然草を書いた吉田兼好、方丈記を書いた鴨長明、武田信玄、
上杉謙信、織田信長、徳川家康、吉田松陰、坂本龍馬、西郷隆盛などなど。
日本人が2000年にわたり、学び続けてきたのが四書五経です。
その中核が論語なのです。
論語は四書のひとつです。
四書(ししょ)は、儒教の経書のうち『大学』『中庸』『論語』『孟子』の4つの書物です。
五経(ごけい・ごきょう)または六経(りっけい・りくけい)は、儒教で基本経典とされる5種類または6種類の経書の総称です。
すなわち『詩経』・『書経』・『礼記』・『易経』・『春秋』。論語を知らなければ、日本人ではないといっても過言ではないでしょう。
論語の具体例を紹介すると、たとえば、
論語 里仁第四 25
漢文:子曰。徳不孤。必有鄰。
読み下し:子し曰いわく、徳とくは孤こならず、必かならず隣となり有あり。
訳:「孔子先生が言われました。徳というものは孤立するものではない。必ず隣ができるものだ」
論語 為政第二 11
漢文:子曰。温故而知新。可以爲師矣。
読み下し:子し曰いわく、故ふるきを温たずねて新あたらしきを知しれば、以もって師し為たる可べし。
訳:「孔子先生が言われました。古いことに習熟していて、新しいことも学んで行けば、教師になれるだろうね」
論語 為政第二 15
漢文:子曰。學而不思則罔。思而不學則殆。
読み下し:子し曰いわく、学まなびで思おもわざれば則すなわち罔くらし。思おもいて学まなばざれば則すなわち殆あやうし。
訳:「孔子先生が言われました。他に学ぶだけで自分で考えなければ、真理の光は見えない。自分で考えるだけで他に学ばなければ独断におちいる危険がある」
その論語の解説動画を始めました。
サンプル動画は以下になります。
今後この古典の解説動画をどんどんアップしていきます。
是非ご覧になってみてください。
孔子について
論語について
1500年以上に渡たる日本人の精神的バックボーン
私は、FM放送にて毎週「論語の教え」と題して2年以上、論語のことばを毎週1つ紹介していました。
論語とは簡単にいうと、孔子という哲学者の名言集です。
毎週やっていると、孔子とう人の人間性がよくわかります。
2500年前の人ですが、いまだに世界中で読まれている理由は、単なる哲学ではなく、生きた言葉だからでしょう。
難しいことも言えば、わかりやすいこともいい、時には皮肉や嘆きも言います。
人間くさい孔子が、論語の言葉の中からあぶり出てくるのです。
いくつかご紹介します。
たとえば、有名な孔子の私の履歴書的な
為政第二_04
原文子曰
吾十;
有五而志于學
三十而立
四十而不惑
五十而知天命
六十而耳順
七十而從心所欲
不踰矩
読み下し
しのたまわく
われじゅうゆうごにしてがくにこころざす
さんじゅうにしてたつ
しじゅうにしてまどわず
ごじゅうにしててんめいをしる
ろくじゅうにしてみみしたがう
しちじゅうにしてこころのほっするところにしたがいて
のりをこえず
訳
孔子先生がおっしゃった
私は15歳で学問を志した
30歳で学問で身を立てられ
40歳で学問への迷いがなくなり
50歳で自らの天命を知った
60歳で人の言葉を偏見無く聴け
70歳で心のままに行動しても
人の道を踏み外すことが無くなった
孔子が74歳で亡くなるまで、常に成長していく様が、よくわかります。
為政第二_15
原文
子曰
學而不思則罔
思而不學則殆
読み下し
しのたまわく
まなびでおもわざればすなわちくらし
おもいてまなばざればすなわちあやうし
訳
孔子先生がおっしゃった
学んで考えなければ理解できない
学ばず考えれば独善になり危険だ
この言葉は、学ぶことの本質を突いていますね。
論語 里仁第四_24
原文
子曰
君子欲訥於言
而敏於行
読み下し
しいわく
くんしはげんにとつにして
おこないにびんならんことをほっす
翻訳
孔子が言った
人格者は言葉を控え目にして
行動を機敏にしたいと思う
この言葉は、リーダーとしての在り方を述べています。
論語里仁第四_21
原文
子曰
父母之年
不可不知也
一則以喜
一則以懼
読み下し
しのたまわく
ふぼのとしは
しらざるべからざるなり
いつにはすなわちもってよろこび
いつにはすなわちもっておそる
訳
孔子先生が言われました
両親の年齢を
把握していなければならない
一つは長寿を喜び
もう一つは健康を気遣うために
この言葉は、儒教的な父母を敬う道徳観を述べています。
雍也第六_03
原文
哀公問
弟子孰爲好學
孔子對曰
有顔回者好學
不遷怒
不貳過
不幸短命死矣
今也則亡
未聞好學者也
読み下し
あいこうとう
ていしたれかがくをこのむとなす
こうしこたえていわく
がんかいなるものありてがくをこのみたり
いかりをうつさず
あやまちをふたたびせず
ふこうたんめいにしてしせり
いまやすなわちなし
いまだがくをこのむものをきかざるなり
訳
哀公が尋ねた
あなたの弟子で学問を好むのは誰ですか?
孔子は答えた
顔回という者がいて学問が好きで
他人に八つ当たりせず
同じ過ちを二度しませんでした
残念ながら若くして亡くなり
今はもういません
彼以外に学問を好むという者はいません
この言葉は、孔子の愛弟子だった顔回が亡くなったことに対する嘆きと、
残った弟子たちへの叱咤激励だと感じます。
論語は、1500年以上に渡って、日本人の精神的バックボーンでした。
是非読んでみてください。
ネットからも無料で読めます。
論語ガイド
http://lunyu.lightswitch.jp/
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